梅雨時や台風など大雨が降る時に発表される「大雨警報(注意報)」。
大雨が降ることは分かっていても、警報が出るほどの大雨となると不安が増しますね。
しかし、「大雨警報(注意報)」って実際どのくらいの雨を基準として発令されるのか、ご存知でしょうか?
気象庁で発表される降水量何ミリ(mm)とはどういう関係になるのでしょうか?
意外と大雨警報の基準って知られていないと思います。
そこで本記事では
大雨警報(注意報)の基準は何ミリ(何mm)の降水量なのか?気象庁発表の情報をもとに意外と知られてない二つの雨量基準について分かり易くお伝えします。
関連記事:大雨警報が解除される基準とタイミング。解除されない場合とは?解除されたらもう安全?
大雨警報の基準は何ミリ(mm)の降水量で発令されるのか?
気象庁から発令される「大雨警報」、その基準となる降水量は1時間に何ミリ(何mm)の雨なのでしょうか?
まず、結論からお伝えすると、
大雨警報の基準は、1時間に何ミリ(何mm)といった降水量ではない、ということです。
「え?降水量でないなら、じゃあ、何を基準にして出しているの?」と思われるかも知れませんね。
そこで、大雨警報の発令基準が降水量ではない理由と、どんな基準で発令されるのか、次にご説明します。
ちなみに、”大雨”の基準は1時間に降る降水量が何ミリ(mm)かで決まります。
詳細は「”大雨”の基準は1時間に何ミリ(mm)の降水量」の記事でご紹介していますので、ご覧ください。
大雨警報の発令基準が1時間の降水量ではない理由
大雨警報の発令基準が降水量ではない理由は、
「大雨警報」自体が大雨そのものを警戒して発令する報せではないからです。
大雨警報は、大雨による重大な土砂災害や浸水害が発生するおそれがあると予想したときに発表します。特に警戒すべき事項を標題に明示して「大雨警報(土砂災害)」、「大雨警報(浸水害)」又は「大雨警報(土砂災害、浸水害)」のように発表します。
気象庁によると、大雨警報は、大雨による重大な土砂災害や浸水害が発生するおそれがあると予想したときに発表されます。
※「浸水害」とは、大雨により市街地等の排水が追いつかず、建物や田畑が水に浸かってしまう災害のことです。河川が氾濫する洪水とは違います。
つまり、
「大雨警報」が対象とするのは、「土砂災害」と「浸水害」に対する警報であって、大雨そのものではないのです。
大雨警報の基準は土壌雨量指数と表面雨量指数の2つ
では、大雨警報が対象としている「土砂災害」と「浸水害」が発生する恐れ、というのはどのような基準で決められているのでしょうか?
詳細は少々小難しい話になるので、簡単に説明します。
大雨警報の基準①・土壌雨量指数
土壌雨量指数とは、降った雨による土砂災害危険度の高まりを把握するための指標です。(中略)降った雨が土壌中に水分量としてどれだけ溜まっているかを、タンクモデルを用いて数値化したもの
引用:気象庁 土壌雨量指数
簡潔に言うと、
土壌雨量指数とは、大雨で土壌中に水分が溜まることによる、土砂災害(がけ崩れ)の発生のし易さを表す数値です。
つまり、土壌雨量指数の数値が大きいほど、土砂災害(がけ崩れ)の発生の危険が高くなります。
そして、
土壌雨量指数がある基準値を超えると、「大雨警報(土砂災害)」として発令されます。
大雨警報の基準②・表面雨量指数
表面雨量指数とは、短時間強雨による浸水危険度の高まりを把握するための指標です。(中略)地面の被覆状況や地質、地形勾配などを考慮して、降った雨が地表面にどれだけ溜まっているかを、タンクモデルを用いて数値化したもの
引用:気象庁 表面雨量指数
こちらも簡潔に言うと、
表面雨量指数とは、地表面の排水能力を超えた雨による、浸水害の発生のし易さを表す数値です。
つまり、表面雨量指数の数値が大きいほど、浸水害の発生の危険が高くなります。
そして、
表面雨量指数がある基準値を超えると、「大雨警報(浸水害)」として発令されます。
大雨警報の基準値は地域によって異なる
ここまでの説明で、大雨警報が発令される基準は、降水量何ミリ(mm)ではなく、土壌雨量指数と表面雨量指数という2つの数値が、ある基準値を超えた時であることが分かりました。
大雨警報の基準となるこの2つの数値ですが、
実は設定されている基準値が地域によって異なります。
例えば、次の2つの地域の状況を想像してみて下さい。
- 山林が多い地域など、地盤の緩みによる土砂災害が心配される地域
- 地表面の多くがアスファルトで覆われていて、雨水が地中に浸み込みにくく地表面に溜まりやすい、都市部などの地域
この二つの地域で同じ基準値を使うことは無理があることが分かりますね。
このような理由で、気象庁は全国の各地域それぞれで大雨警報を発令する基準値を細かく決めています。
ちなみに、あなたの住んでいる地域の基準値は気象庁HPで確認することができます。
こちらのサイトから自分の住んでいる地域をクリックしてみて下さい。
2クリックほどで自分の住んでいる地域の、大雨警報が発令される土壌雨量指数と表面雨量指数の基準値を確認することができます。
大雨警報と大雨注意報の違いは?
ここまでは大雨警報の基準について確認してきましたが、では、大雨注意報とはどのように違うのでしょうか?
”警報”と”注意報”なので、その危険度の違い、というのは何となく感じるかも知れません。
実はその通りです!
大雨注意報の基準値は、先ほどまで紹介した大雨警報の基準値よりもやや低く設定されています。
ここで一例として、東京都新宿区の大雨注意報の基準値と大雨警報の基準値を確認してみましょう。
先ほどご紹介した気象庁の警報・注意報発表基準一覧表から東京都新宿区を見てみます。
表面雨量指数基準
大雨警報 = 19
大雨注意報 = 11
土壌雨量指数基準
大雨警報 = 180
大雨注意報 = 127
令和3年6月8日発表の基準より
ザックリではありますが、数値で表すと大雨警報は大雨注意報の1.5倍程度の危険度、と言えるかも知れません。
記録的短時間大雨情報と大雨特別警報とは?
ここまで大雨警報と共に気象情報で発表される雨の強さと降水量について、ご紹介してきました。
最後に、
大雨警報と似た用語である「記録的短時間大雨情報」と「大雨特別警報」について、ご紹介します。
用語の聞こえは大雨警報と似ていますが、その性質は全く違うものですので、注意して下さい。
記録的短時間大雨情報
数年に一度程度しか発生しないような短時間の大雨です。
その基準は、1時間雨量歴代1位または2位の記録を参考に、概ね府県予報区ごとに決めています。この情報は、大雨警報発表中に、現在の降雨がその地域にとって土砂災害や浸水害、中小河川の洪水災害の発生につながるような、稀にしか観測しない雨量であることをお知らせするために発表する(中略)
この情報が発表されたときは、お住まいの地域で、土砂災害や浸水害、中小河川の洪水災害の発生につながるような猛烈な雨が降っていることを意味しています。
記録的短時間大雨情報は、1時間雨量80ミリ以上である「猛烈な雨」を更に超えている大雨です。
しかも、すでに何かしらの災害が発生しているほどの大雨であるため、あなたの地元市町村の避難情報等を確認し、危険から命を守るための行動が必要になります。
ちなみに、各地域の記録的短時間大雨情報の基準は、こちらで確認できます。
大雨特別警報
台風や集中豪雨により数十年に一度の降雨量となる大雨が予想される場合に発令されます。
特別警報は、警報の発表基準をはるかに超える現象に対して発表し、その発表基準は、地域の災害対策を担う都道府県知事及び市町村長の意見を聴いて決めています。
(中略)
- お住まいの地域は、これまでに経験したことのないような、重大な危険が差し迫った異常な状況にあります。
- この数十年間災害の経験が無い地域でも、重大な災害の起こるおそれが著しく高まっていますので、油断しないでください。
(中略)
土砂崩れや浸水による何らかの災害がすでに発生している可能性が極めて高く、警戒レベル5に相当する状況です。
命を守るために最善を尽くさなければならない状況です。引用:気象庁 特別警報について
大雨特別警報は、特別な説明は不要なほど、危険が差し迫った事態です。
気象庁HPにもある通り、何よりも命を守るために最善を尽くさなければならない状況です。
テレビやラジオ、インターネットなど、あらゆる手段を使って、情報をキャッチしていくことが必要です。
まとめ:大雨警報と注意報の基準は何ミリ(mm)ではない。2つの雨量基準で決まる
最後にここまでの内容をまとめます。
・大雨警報の基準は、1時間に何ミリ(何mm)といった降水量ではない。
・大雨警報が対象としているのは、土砂災害や浸水害の発生の危険性。
・土砂災害は土壌雨量指数、浸水害は表面雨量指数の値を使い、その数値がある基準値を超えるとそれぞれ大雨警報(土砂災害)、大雨警報(浸水害)が発令される。
・二つの基準値は地域ごとに違う。
・大雨注意報との違いは、基準値の違い。
・記録的短時間大雨情報は「数年に一度程度しか発生しないような短時間の大雨」。
・大雨特別警報は「台風や集中豪雨により数十年に一度の降雨量となる大雨が予想される場合」に発令される。
大雨警報(注意報)が発表される基準が「降水量が何mm以上で大雨警報(注意報)」ではないことには、初めて知った方には驚きですね。
警報も災害の危険性をより正確に伝えるため進化しているのです。
外出の時には最新の気象情報を手に入れて、思わぬ災害に巻き込まれるようなことのないように十分に注意してください。
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